海の底、森の奥

EXO、東方神起に関する小説など書いています。
お友達を作れたりしたらなあと思っています。
どうぞよろしくお願いします。

ふたりでいると 4

砂糖の入った壺とティースプーンを持ち、チャニョルはベッキョンの元へ戻って来た。

ベッキョンはチャニョルの姿を目で追うことはしなかった。ただどこか一点を虚ろな目で見つめるだけだ。

チャニョルがどすんとその隣に座る。ベッキョンの体がかすかに揺れる。

スプーンを掲げてチャニョルは問う。

「何杯欲しい」

スプーン越しにチャニョルを見、ベッキョンは答える。

「…2杯」

「多くねーか?」

言いながら、チャニョルはシュガーポットの蓋を持ち上げる。

匙を突っ込み、一杯目をさらさらとカップに落とす。茶色い光る砂のような砂糖が、濃いブラウンの表面に浮かぶ。この部屋には、d.oとスホの意向で、白い砂糖はない。

動きを繰り返す直前で、チャニョルは再びベッキョンを見る。

「…マジで入れる?」

手を空中に浮かせたままチャニョルはベッキョンの返事を待つ。ベッキョンはチャニョルを見ずに、口だけを動かす。

「…今日くらい、いいだろ」

ハスキーな声が囁く。

それを受け、チャニョルは視線を手元に落とし、もう一杯、砂糖をココアに混ぜた。

くるくると円を描き、そのままテーブルの上を滑らせ、ベッキョンの前にカップを置く。

「どーぞ」

ソファにもたれ、チャニョルは頭の後ろで手を組み、ベッキョンがカップを持って口に運ぶのを眺めた。

こく、こく、と、また子供のようにココアを飲み込むベッキョンを見、チャニョルは自分たちが小学生で、うちにベッキョンが遊びに来たかのような錯覚に陥った。

ベッキョンはカップから口を離し、上唇に付いた茶色い名残りをピンク色の舌をちらりと出して、舐め取る。

「…うまいか?」

白日夢をほのかに残したまま、チャニョルはベッキョンに尋ねた。

「甘い」

「そりゃそーだろーな」

はは、と笑ってチャニョルは言う。

「……少し甘すぎるくらいで、今はちょうどいい」

ベッキョンはココアの水面を見つめ、零す。

「…何があったか、聞いた方がいーか?」

「…なんだよ、それ」

帰宅してから初めて、ベッキョンは笑顔を見せた。力ない、呆れたようなそれではあったが。

「聞かない方がいーならもう聞かねー」

宙に視線を移し、チャニョルは言う。

ベッキョンはそんなチャニョルを横目で見、いっとき考え、黙った。

おもむろに口を開く。

「…聞いていーよ」

チャニョルは少し、驚いた。後頭部の手を離し、両膝に両肘をつき、ベッキョンを向いた。

「…何があったんだよ」

ココアをもうひとくち飲み、息を吐き出して、ベッキョンは質問に答える。

「………浮気された」

頬杖をついたチャニョルは、らんらんと光る大きな瞳を、瞬きを忘れベッキョンの顔に向ける。

そんなチャニョルの方を、ベッキョンは見られない。

自分で言葉にしたことで、さっき放ったばかりの捨て台詞のシーンが、驚く程のスピードで、ベッキョンを追って来た。

ココアを包む手だけが、温かかった。

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