海の底、森の奥

EXO、東方神起に関する小説など書いています。
お友達を作れたりしたらなあと思っています。
どうぞよろしくお願いします。

食べよ、歌えよ、恋せよ 10

ユノは変わった。

次の日から仕事に普通に復帰した。

調子が悪そうなようすもなく、チャンミン以外は皆、1日で治ったんだなとしか思わなかった。

顔色がすこぶるいいとは言えなかったが、振る舞いに変化はなく、仲間と談笑を交わし、ミーティングを行い、ダンスで汗を流した。

大声を上げて笑うユノは、いつもと同じ、ユノだった。

だが、着実にユノは変わって行った。

チャンミンはそのようすを、興味深く観察した。

まず、煙草をやめた。

どんなに周りが言っても、チャンミンが小言の多い小姑のようにちくちくいじめても、絶対にやめなかった煙草を、やめた。

健康管理。尋ねられればユノはにこやかにそう答えた。

もちろん違った。

チャンミンに、ユノは悲しそうに教えた。

「ダンサーでシンガーなのに煙草吸ってるなんて馬鹿だって言うんだ」

その通りだよ、とチャンミンは思い、実際、その通りだね、と口にした。

禁煙に関して特段苦しんでいる印象も受けなかった。

理由を尋ねると、首を傾げてユノは言った。

「なんでだろうな。ほんとはもっと吸いたくなってもおかしくないと思うんだけど」

そう言いながらユノは笑った。

「彼女と会うとき、匂いを嫌がられるのが何より嫌なんだ」

次に、間食をしなくなった。

ユノは甘いものを含めた菓子を、ぱくぱく食べる習慣があった。

それはチャンミンもしないではなかったが、ユノは度が過ぎた。

年齢を重ねるにつれ、消費できないものが蓄積されていき、ユノは常に体型を気にした。

常時箱で冷凍庫にストックされていたアイスクリームが、ひとつもなくても平気だと、ある日ユノはチャンミンに打ち明けた。重大事項のように。

「平常心でいられるんだよ、なくても」

眉間を寄せ、考え込むように言葉を続ける。

「こんなこと初めてだな」

チャンミンは控え室に置いてある、さまざまな種類の菓子がまったく減っていないのを、東方神起を始めて、初めて、目にすることになる。

そして、気遣い。

ユノははっきり言って鈍感で粗雑だった。

男らしいと言えば聞こえはいいが、チャンミンやその他長時間一緒にいる者は、そのだらしなさに時折怒りを覚えたものだった。

しかし、交際を始めてこっち、徐々に改善の兆しが見えた。

あちこちに自分のものを置きっぱなしにしない。

相手、特に女性の変化や態度にかなりの確率で気付く。

言葉を口にするまで少し思案の時間を取る。

チャンミンは驚いた。

昼食からふたりで戻り、目の前でユノがペットボトルを飲み出し、蓋を閉め、きちんと鞄にしまいこみ、そのまま鞄に前もって入れておいたらしいガムを取り出して、焼肉の後のチャンミンに勧めた。自分の口にひとつ放りながら。

この振る舞いは大多数の人間がごく自然に行うことだろうが、練習室の鏡の前に立つ我らがスター様は、すんなりとできたことがなかったのだ。

目を丸くしてガムを受け取るチャンミンに対し、ユノの顔には「?」が浮かんでいた。もぐもぐしながら微笑みを浮かべて。

ユノは見違えるようになった。

肌の肌理が細かくなり、ニキビは消え、いつも髭は綺麗に剃られ、体型が締まった。煙草の匂いは失せ、代わりにほのかな香水しか香らなくなった。服装も、訳の分からない色味や柄物をあまり着なくなり、こざっぱりとした。そして穏やかで、気配り上手と言えなくもなかった。

こんなことってあるものなのか。

チャンミンは隣に立つ、そして向かい合って座る、長年のパートナーを、心底不思議な気持ちで眺めた。

そして心配した。

これは、女ができたと、ばれてしまう。いや、きっと、ばれている。

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