海の底、森の奥

EXO、東方神起に関する小説など書いています。
お友達を作れたりしたらなあと思っています。
どうぞよろしくお願いします。

人さらいの条件 18

寝巻きを身に付け、髪を乾かすと、ギョンスはベッドに潜り込んだ。

ひどく疲れていた。

目を閉じると、仕事を含めたたくさんのことがギョンスの頭に去来した。

もちろん、その中に、カイもいた。

ギョンスは浴室の入り口を隔てて向かい合ったときのカイの顔が、脳裏から離れなかった。

今までのどのカイよりも、ギョンスに訴えるものがその表情にはあった。

カイにあんな顔をさせているという事実に、ギョンスの胸は痛んだ。目をぎゅっと強くつむる。ぐにゃぐにゃとした絵の具の混ざりのように、脳内はピントがぼけていく。眠りに、ギョンスは落ちていった。

枕元の携帯電話が、一瞬、震えた。

ギョンスは掌でそれを包んだ。だが、そのまま、動きは止まった。チェンからだと、分かっていた。たとえ現実と夢の狭間にいても。その言葉を読みたかった。しかし、それは、朝まで叶わなかった。


眠りながら、ギョンスはカイたちが談笑しながら部屋に入ってきたのになんとなく気付いた。

抑えてはいても、漏れ出すふたりの声の明るさに、半分寝たままで、ギョンスは救われるような心地がした。

少し、微笑んだかもしれない。

そして再び、何も分からなくなった。


夢うつつの中、寝息が聞こえた。

あいつ鼻が詰まっているみたいだな、とギョンスはうっすら思った。

仰向けに寝ていたギョンスは、目を開くことはしなかった。

だが、何か、変だった。

寝息はひとつしかないようだ。

寝息でない、呼吸が、すぐ近くにある、気がした。

生き物の体温が、ギョンスのベッドの近くに、勘違いかもしれない、と思わせる程度だったが、感じられた。

ジョンイン。

ギョンスは思わず、瞼を閉じ、口も動かさず、その者の名を心中で呼んだ。

ただ立ち尽くし、自分を見下ろしているらしかった。

何故か、ギョンスは、先日自慰行為をすぐそこのベッドで行われたときのような戦慄が、今は感じられなかった。

夢かもしれない、とすら、平静な心で思った。

そして、別に、現実でも構わない、と。

見たいなら見ればいい。

見るだけしか、しないのだから。

それしか、この恋情に飲み込まれた人間には、許されてはいないのだから。

寝顔を晒して、ギョンスは自分を差し出し、また夢へと落ちた。

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