海の底、森の奥

EXO、東方神起に関する小説など書いています。
お友達を作れたりしたらなあと思っています。
どうぞよろしくお願いします。

束の間から 24

「ばれた」

チャニョルは俺の部屋にいた。

俺は机の前の椅子に座り、チャニョルはベッドに座っていた。

ローションのボトルを見られてすぐ、俺はチャニョルに携帯で連絡を取った。とりあえず時間を作って、会いたいと。ふたりだけで。

仕事やギョンスの目があり、なかなかふたりきりにはなれなかった。

その間チャニョルは、俺をちらちらと目の端で見た。

やめろ、と俺は思った。

ギョンスがいる前では特に。

メッセージでそれを伝えておけばよかったかと、少し悔やんだ。

だができれば直接話をし、相談をしたかった。

俺はその視線を完全に無視し、いつも通りに振る舞った。

そしてようやく、今、ギョンスの仕事中の夜、俺も部屋にひとりで過ごせ、チャニョルも体が空き、こうして口火を切っていた。

チャニョルは俺が体の側面を見せ、振り向ける格好にしている顔を、じっと見た。

口がきゅっと結び、大きな目は若干見開かれた。

「……誰に?」

「…ギョンス」

俺は視線をそらし、顔を俯けた。指先の皮をかしかしとこする。

「……ばれたって、俺がお前としてるのを、ギョンスが完璧に知ったってことか?」

その白目も黒目も大きい目を、俺から離さないのを、俺は分かっている。

それでも俺は、見返すのが億劫だった。

「違う。ただ、俺が……ローションを、ギョンスに見られちまった。俺が、自分で、使ったって、言ったけど……。シーツ洗濯出すのも見られたし、うまくごまかせた自信は、ない。…ギョンスだし。誰にも言わないとは言ってたから、それは守ると思うけど」

そこまで言って、俺はまた、横目でチャニョルの顔を見た。

目を広げるのはやめていた。

仕事でトラブったときのような、表情をしていた。そこにはわずかに、哀しみも混じっているような気がするのを、俺は錯覚と思いたかった。

「……どうする?」

俺は、チャニョルの顔を見続けられなかった。

どうしても、何度も手元を、見下ろしてしまう。

「……どうするって?」

「…………危なすぎるだろ。これ以上、……続ける、の……」

けん、と、咳をする。

しばらく、なにも返事はなかった。

顔を上げ、横に向けた。

両膝に両肘を付き、チャニョルは前屈みになって、俺を見返していた。

その顔には驚きが含まれていた。明らかに、ショックを受けたような顔だった。

俺はそれを見て驚いた。

どんな顔してんだよ。

そう思った。

…………俺がふったみてーじゃねーか。

「……どうしたんだよ……」

目を合わせたまま、俺は呟くように尋ねた。

今度は、チャニョルがかすかに下を向いた。長い睫毛が目を彩った。

「……いや、そっか、と思って」口の中でぼそぼそと、チャニョルは言う。「…そうだよな…」

胸がちくちくした。

針で際限なく突かれている感じだった。

え、え、と俺は心中漏らしていた。

なんだこれ。

なんだこれ。

なんだこれ。

「………そうだな」

そう言って、チャニョルは立ち上がった。

正面を向き、俺を見ない状態で言葉を続ける。

「…とりあえず、当分やめとこーぜ。お前の言う通りだよ。やべーよな。……最近ちょっと、…無茶しすぎたし。………彼女作んなきゃなあ」

はは、とチャニョルは笑う。

彼女作んなきゃって。

俺の代わりに彼女作んのかよ。

…………本末転倒だろ。

「……彼女に失礼だろ」

思わず俺は反発した。ひどく、いらいらした。

「…そうだな。わりー」

またチャニョルは、かすかに笑った。

踵を返し、チャニョルはドアへと向かう。俺は後ろ姿を目で追うのをやめた。唇を噛み、また爪を見る。

かちゃ、と音がする。

出て行くようすがないので、俺は顎を上げた。

振り返って、チャニョルはこちらを見ていた。

「…今までさんきゅな」

扉の向こうに、大きな体は消えた。

取り残された俺の目には、チャニョルは再び犬に映り、その残像が残っていた。

今、やつは、しかられ、しょげ返った犬、そのものだったのだ。

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