海の底、森の奥

EXO、東方神起に関する小説など書いています。
お友達を作れたりしたらなあと思っています。
どうぞよろしくお願いします。

受容について 番外編 【coffee & chocolate】

香ばしい香りがキッチンに漂う。

セフンはテーブルに突っ伏し、シウミンがコーヒーを淹れる姿を見ていた。

吊り上がった目だなあ。

セフンは思う。

その視線は下にあり、じゅじゅじゅじゅじゅ、という、フィルターが湯を染み渡らせるさりげない音と、ゆるゆると渦を巻く湯気に、神経は集中されている。

と、

「…見んなよ」

左右対称でない笑顔を口元に作り、照れたようにシウミンは言った。目はコーヒーが落ちていくさまを見つめたまま。

「いいじゃん」

セフンは体を起こし、頬杖をつく。目がくにゃりとかまぼこのようになる。

「…やだよ」

こぽこぽこぽこぽ。

淹れ終わったコーヒーを、それぞれのマグカップにシウミンはつぐ。

シウミンのカップは寸胴、マグという名にふさわしい大きさで、真っ白な地に大きな黒い星がひとつ、描かれている。

セフンのそれは底に向かってまっすぐ細くなっていくフォルムに、黒地に白でストライプが入っていた。

どちらにもたっぷり、シウミンはコーヒーを満たした。

ふたつのカップから間断なく、白い靄が上がる。

両手にそれらを持ち、シウミンはセフンのついているテーブルに、カウンターを回ってやって来る。

セフンは自分の隣の席の椅子を引き、その座る部分を、ぽんぽんと勢いよく、笑顔で叩いた。

テーブルにカップを置きながら、シウミンは困ったふうに笑う。

「隣?」

「うん」

「えー」

「いいじゃん」

立ったまま困惑をほのかに混ぜた笑顔のシウミンの腕を、セフンは引っ張った。

しかたなく腰を下ろすシウミン。

セフンの前とシウミンの前、ひとつずつカップは置かれているが、ふたりはお互いを見ていた。

「…近いよ」

膝がぶつかり、シウミンは椅子ごと後退しようとする。

「駄目だよ」

セフンは椅子の背を掴んでそれを止める。

「……誰か起きてくるかもしんないだろ」

「それまで、いいじゃん」

にこにこしてセフンは背から手を離す。

顔を横に向け、カップを見ると、「あ、牛乳」と言って、立ち上がった。

シウミンは薄く染まった顔で、コーヒーを少し、すする。

ちょっと、苦みが強いかな。

ばこん、と冷蔵庫の閉まる音とともに、セフンはテーブルに戻ってくる。

「やりー」

笑顔をますます明るくしたセフンは、牛乳パックを置くと、どかっと椅子に座った。

「…なにが」

シウミンは心持ち体を引いてセフンを向く。

セフンは逆に前屈みになりシウミンに言う。

「ほら!」

指先には小さなチョコがつままれ、それをセフンはシウミンに見せた。

ぺりぺりと包みを剥ぎ、唇に持っていく。

歯に挟んで、シウミンを向いた。

「はんぶんこしよ」

そのままセフンは言った。

シウミンの目は、セフンの小さな口からその半身を晒した、四角い小さなチョコに注がれた。

「え?」

おかしな笑いを浮かべたシウミンは、半月状態のセフンの目を見る。

「はやく」

もう滑舌が悪いとかそんな問題ではない声で、セフンは急かす。

「だれかきちゃうよ」

きょときょとと、シウミンは辺りを見回す。

そして再び、チョコに視線を持っていく。

眉はしかめられ、口がふにふにと開いたり閉じたりする。

体を慎重に、セフンの方へ傾けた。

唇を剥き、チョコに、歯を立てようと、した。

かっ。

その瞬間、セフンはシウミンの唇ごとチョコを口に入れた。

「んうっ」

大きく口をこじ開けられ、舌の上にカカオの塊とセフンの舌があった。

甘みと苦み、そして弾力と躍動が、シウミンの口内をいっぱいにした。

シウミンはセフンの両肩に両手を置き、顔を引き離そうとする。かすかに、その気が本当は、ないように。

チョコが、溶けていく。

シウミンの頭も、同じようだった。

んぱ、と、唇から解放された。

閉じていた目をそろそろと開くと、セフンの変わらぬ笑顔がある。

「おいしーね」

そう言って、セフンはカップに牛乳を足す。

シウミンは再度周囲に目を走らせる。人の気配は、ないようだ。

ふー、と嘆息し、シウミンもコーヒーを取る。ひとくち、含む。

ちょうどいい。

ごくりごくりと飲み干すと、チョコはどんどん、コーヒーと溶け合っていく。





おわり

×

非ログインユーザーとして返信する

あと 2000文字

※は必須項目です。