海の底、森の奥

EXO、東方神起に関する小説など書いています。
お友達を作れたりしたらなあと思っています。
どうぞよろしくお願いします。

心中の道連れ

歌を歌うときは、……どう言ったらいいのか分からない。

自分の魂を無理矢理腹の中から引っ張り出すような、そんな感覚がある。

それは妙な体験で、何度繰り返しても、飽きるということがない。鼻歌であっても、ライブであっても。

ひとりで歌うこともあれば、大勢で歌うこともある。

そして、ふたりで歌うことも。

俺の隣には、瞳の小さな、儚げな顔をした、しかしそれとは真逆の生命力に溢れた声を出す、男がいつも、立っている。

いつまでもどこか、少年のような佇まいを見せて。

(それは俺が言えることではないかもしれない、とは思う。)

その声を一番近くで聴き、次を任される俺は、ジェラシーとプレッシャーを胸の内に隠す。

そいつと俺は、まったく違う人間だ。

どこもかしこも、違いすぎる。

なのにずっとこうして、声を追い掛け、重ねることを、繰り返している。

この感情を正確に伝えることは、できないだろう。

自分と正反対の人間と、目を合わせ、体に触れ、出せる最大限の音を口の中から送り出す、その行為の激情を。

このために生まれてきたと、思うのだ。



「ギョンス、食べるもんなんかない」

昼過ぎまで寝ていたベッキョンが、爆発した頭をそのままに起き出し、目をこすりながらキッチンに立つ俺に聞く。

細い首と細い指と細い目が、振り向いた俺の目に映る。

寝不足なのか、顔色が冴えなかった。

「今ラーメンでも作ろうかと思ったとこ」

俺は答えながら、先程出した鍋を大きいものに変えようと、再度シンクの下を開く。

「やったー」

きちんと喜びを含んだ声で、だが力なく呟くと、パジャマのままベッキョンはテーブルについた。

ベッキョンは寝るときちゃんとパジャマを着ることが多い。

そして恐ろしく似合う。

開襟した首回りの華奢さは、年を経ても変わらない。

水を満たした鍋を火に掛け、俺はテーブルに崩れ落ちるベッキョンのうなじを見下ろす。

ぼきっと折れそうだな。

何百編も思ったことを、また思う。

薄いグレーのストライプのパジャマは、サイズがひとつ大きいのではと勘繰りたくなる。

また、痩せたのだろうか。

「お前ちゃんと食べてんの。またダイエット?」

冷蔵庫の野菜室を覗いて、俺は大きな声を掛ける。

青梗菜、もやし、葱。

「…してねーよー」

「食べろよ。もたないぞ」

ばん、と閉めて、抱えた野菜を水にさらす。

「……んー……」

再び冷蔵庫を開け、今度はハムと卵を手に取った。

湯が沸き始めた音がし、俺は鍋の蓋を取る。

もくもくと料理を進める俺の背後から、弱々しい視線と声がやって来る。

「…ギョンスのラーメンうれしーなー…」

本当に嬉しいのだ。

声で分かる。

寝ずに働いて帰って来た、この国のスターでもある若者が、今一番嬉しいのが俺の作るラーメンとは。

野菜を切っていた手を止め、ベッキョンを向く。

「…バターを乗せてやる」

にや、と笑ったな、と自分で分かる。

モニターやラッシュでさんざんチェックする俺の、あの顔だ。

再びテーブルに付けた顔の中で、消え去りそうになっていた目が光を得、かすかに生き生き輝き出す。

口をだらしなく開き、「やったあー」と言う。

尻尾が付いていたらぶんぶん勢いよく振っていそうなようすを見、俺は手元に視線を戻す。

湯がぼこぼこと俺を誘う。

骨と皮だけになる前に、俺がこいつの肉を増やす。

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