海の底、森の奥

EXO、東方神起に関する小説など書いています。
お友達を作れたりしたらなあと思っています。
どうぞよろしくお願いします。

心中の道連れ 2

いつだって、どこでだって、歌ってしまう。

なんか歌わないということが、俺にはできない。

むしろなぜみんな歌わずにいられるのか不思議になる。

あの、胃と喉を震わせる、自分の声が耳に聴こえる、音と体がひとつになる、行為をせずに、生きられない。

俺は俺の声を気に入っている。

ずっと、聴いていられる。

そこに追いついてくる、声がある。

柔らかい、角のない、変幻自在な、男の声。

俺にないなにかが、その歌にはある。

リズムアンドブルースって、よく言ったもんだよな、なんて分かったふうなことまで思ってしまう。

あいつの歌は、まさしくそれだ。

体内で、きっと流れている。

絶え間ない鼓動のように、旋律と、ビートが。

負けたくない、と思う。

だが、勝てない、とも思う。

あいつのようには、なれない。

そのくっきりした顔立ちと同じように、歌だって、俺はあんなふうには、絶対、歌えない。



ものすごい具沢山のラーメンがふたつ、テーブルに置かれた。

俺は本当にくったくたで、だけどギョンスが俺の周りをうろうろしながら食卓の準備をしているさまをテーブルの上に上半身を預けたまま眺めるのは、どうしてかとてもいい気分だった。

ぼごん、と、テーブルに強い振動が伝わって、俺は思わず体を起こす。

ミネラルウォーターのどでかいペットボトルの中身が、ゆらゆら揺れている。

背もたれに体を付け、俺は半目でテーブルの上を見つめる。

ラーメン、グラス、箸、水、……とギョンスの手。

切り揃えられた爪。

ギョンスらしい、その手。

俺の向かいに、ギョンスは腰掛けた。

ペットボトルの水をグラスにそそぎながら、ギョンスは言う。

「ほら、食えよ」

とぷぷぷぷぷ。

ふたつとも満たすと、蓋を閉めてテーブルに置き、俺の目をその揺るがない視線で刺すように見た。

「……うまそー」

まじでうまそうだった。

ほかほかと湯気の立つ、薄い緑やピンクやアイボリーに色付いた、こんもりとした鉢の上は、幸せがかたちを成したようだった。

「…写真撮ろうかな」

「…いいから、そういうの」

呆れたギョンスは、箸を取って食べ始める。

ずるる、ずるると音がする。

俺は立ち上がってよろよろと部屋に戻る。

ベッドの枕元に、携帯が放ってあるのを見付け、手に取り、踵を返す。

再び現れた俺を、ギョンスはもうもうと立ち上る湯気とともに迎え、見ている。

「…まじで撮んの」

「うん」

にへらー、と、おそらくなっているだろう口元で答え、俺はカメラを起動する。

ラーメンのみ。

ラーメンとギョンス。

「…撮んなよ」

そう言いつつも、そのままの姿勢でただ俺を見つめている。少しだけ口の片端を上げて。

「よっし。よく撮れた」

できにすっかり満足した俺は、椅子に座って早速食べ始める。

俺の勢いよくすする姿を見下ろす視線を感じる。

動きを止めて、俺はその視線を受け止める。

「…バターがうまい。超合ってる」

ごくんと飲み込み、また、あの締まりのない笑顔を作る。俺は自分で、自分の笑った顔が好きかどうか、よく分からない。

くはは、と声を出し、ギョンスも笑う。

まさに破顔、といった表情で。

「そーだろ」

俺はこの笑顔は好きだ、と思う。

天使みたいだなと思う。

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