海の底、森の奥

EXO、東方神起に関する小説など書いています。
お友達を作れたりしたらなあと思っています。
どうぞよろしくお願いします。

心中の道連れ 3

今日は夜のロケ撮影がある。

夕食を済ませ、俺は撮影場所に向かうため、マネージャーの待つ車へと行くよう、玄関の大混雑の足元をよけつつ、ドアへとたどり着いた。

扉を開けようとすると、向こうから錠を開ける音がし、俺は体を引いた。

薄い顔より更に色味とコントラストを抜いたような、ベッキョンのそれが隙間から覗く。

汗の匂いが俺の鼻を抜けた。

「…ただいまあ」

倒れ込むようにベッキョンは中に入り、俺の肩に首を預け、のしかかって来た。

「疲れたー」

少し湿ったベッキョンの肌が、俺の首に直接触れ、匂いはますます鼻腔を刺激した。

俺はベッキョンの背に腕を回し、ぽんぽん、と叩く。

「お疲れー」

そこもしっとりと俺の手に触れる。

「…ギョンスさつえー?」

体が密着していることで、振動とともに言葉がダイレクトに伝わる。

「そうだよ」

俺の声も、体を震わせる。どちらもの。

「そっかー」

ベッキョンは俺の両腕を掴み、体を起こす。

そして俺と同じ高さの目線をそのまま俺に向け、俺たちは見合う。

とろんとした目をベッキョンは俺から離さず、掌で俺の頬をぺちぺち、と軽く叩いた。

閉じた口の端を、かすかに、にーと上に向ける。

「頑張れー」

笑みを消し、もう一方の手も反対側の頬に持って来て、俺は両頬を挟まれた。

ベッキョンはぱちっと目を開く。それでもまだまだ細く小さいそれである。

「……無理しすぎんなよ」

むにー、と、頬を両手で押され、俺は唇が飛び出す。

ひはは、と笑い、ベッキョンは顔が緩く崩れる。垂れた目は際限なく垂れ、口は半月とは言えないかたちに開く。

ひどい顔をしているに違いないまま、俺はただでさえ元から盛り上がった唇が更に高さを増した状態で、「分かってるよ」と無理矢理答える。

その細い手首に両手を掛け、そっと俺は禁を解く。

「行ってくるよ」

ほんの少しだけ、微笑む。気付かなければ、気付かないくらいの笑顔で。

「ん」

顔をそらし、ベッキョンは靴を脱いで部屋に上がる。

俺は振り向いてそのようすを眺めながら、「ベッキョン」と声を掛ける。

肩越しに俺を見て、ベッキョンは立ち止まる。

「……さっき食ったチゲ、残ってるから」

「……お前作ったの?」

仔犬のように俺を見る目がおかしいのと哀しいのとで、俺は気の抜けた笑いがまた込みあげそうになる。

「…ううん」

「なんだー」

「でも美味かったよ」

残念そうな表情に、俺は素直な感想を急いで告げる。そこにはそうであってよかったという気持ちと、そうでなくてもよかったという気持ちが同じくらいあり、俺は自分で混乱する。

「……ギョンスのラーメン食いてーなー」

そう言って前を向いたベッキョンは、廊下を行く。

また作ってやるよ。

約束をする前に、その華奢な体はダイニングルームへの扉の向こうに消えた。

俺は肩のリュックサックを掛け直し、ドアを開けた。

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