海の底、森の奥

EXO、東方神起に関する小説など書いています。
お友達を作れたりしたらなあと思っています。
どうぞよろしくお願いします。

心中の道連れ 4

こもった、玄関の扉が閉じる音が聞こえ、俺は嘆息する。

「おかえりー」

チョコレートをつまみながら、ミンソク兄さんがダイニングルームに現れた俺に言う。ぽり、ぽり、と軽快な音が膨らんだ頬から鳴っている。湯気の立つコーヒーが、ローテーブルに置いてある。

人気のドラマにチャンネルが合わせられており、兄さんは俺を一瞥すると、すぐにテレビに目を戻した。

勉強熱心だな。

俺は、兄さんがただ好んで観賞しているのでないことを、彼の性格からよく分かっている。

その心根のまっとうさに、拗ねたいような、ただひれ伏したいような気持ちに、いつもと同様、なってしまう。

「ただいまー」

結局俺のそんな胸の内など、皆の前では子供の如きいたずらに姿を変える。

重い足取りで兄さんの視界を遮る。

おい、邪魔だーという声とジェスチャーを尻目に、俺はわざと歩くスピードを遅くする。

ようやく画面の前を通り過ぎると、まったく、と言いながら兄さんはクッションを抱え直した。

キッチンの前に立ち、風呂に入るか、飯を食べるか、どちらから先にしようか俺は迷う。

「にいさーん」

コンロの上の鍋に目を留めたまま、俺は声を掛ける。

「んー」

「鍋ん中身まじで残ってんの?」

「鍋?ああ、チゲ?うん、残ってるよ。ギョンスお前の分取っとけってしつこく2回は言ってたから、ひとり分は残ってるはずだよ」

きゃああ、という悲鳴と、男の怒号と罵声が、キッチンの奥を向いた俺の、耳に届く。

なんなんだ、この話。

怯えたようにうわー、と小さく呟くと、その声のボリュームを上げ、兄さんが語り掛けてくる。

「美味かったよ。腹減ってんだろ?食べろよ」

すげー話だな、と言いながら、かり、という歯とチョコレートが会う音を立てるのを背後に、俺は鍋から目をそらさず、口を動かす。

「…先、風呂入る」

「ん?うん。わあった」

ふー、ずー、と、コーヒーをすする音を聞き、よく夜中に飲むなと思いつつ、俺は鞄をずりそうになりながらドアへと向かう。

俺自身、あんなに腹が減って疲れて眠かったのに、シャワーを浴びる前から、体はともかく、頭はくっきりと冴えていた。

コーヒー飲んだみたいだな。

ドアノブに手を掛け、きい、と引くと、後ろからいやあああああ、という絶叫が響いた。

諦めろ、という、はっきりしたひとことが、俺を追ってくる。

それを締め出すように、俺は扉を後ろ手で閉じた。

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