海の底、森の奥

EXO、東方神起に関する小説など書いています。
お友達を作れたりしたらなあと思っています。
どうぞよろしくお願いします。

心中の道連れ 7

移動中の車内は家の中の縮図のようだ。

チャニョルとベッキョンが話したり歌ったりふざけたりしているところに、セフンが自ら入ったり、引き込まれるのを拒否したり、している。

連日の撮影でくたびれ果てた俺は、そんな喧騒の中でもわけなく眠れた。

むしろいつでもどこでもどんな状況でも眠れる。

俺に限ったことではない。

俺たちみたいな仕事をしていると、そうでもしないと睡眠が足りなくなるときが、あるものだ。

正確に言えば今はうとうとしているだけで、3割くらいどこか起きたままだった。

まだ明るい外の光が、窓から俺の顔を照らす。

眩しかったが、頬の温もりが心地よくもあった。

不思議なもので、マネージャーを含めた自分以外の全員が笑い、大声を出していることが、まったく苦痛でなく、むしろ心底からの安心を誘う。

太陽の黄色とぬくみ、仲間の歌声と駄話。

膝掛けを胸のあたりまで引き上げ、目を隠した俺は、ゆったりとした鼓動の音とともに現実と夢の境に落ちた。

「お前たちレコーディングどうだったんだよ、そういや」

チャニョルの低く太い声が、ドアの向こうから漏れるように、聞こえる。

「あーそう言えばそうだった。あれでしょ、化粧品のでしょ」

振り向いて兄たちに口をきく、セフンの尖った声も。

「あれ?すげーよかったよ。ギョンスなんかすごい気に入っちゃってたし」

……ベッキョンの声。

「そーなの?」

「お前に言ってない?お前も好きそうだよ」

「聞いてないなー多分。どんなん」

ベッキョンが旋律をきちんと歌詞を紡いで歌い出すと、俺はあの歌の魔力によって、眠りの世界を浮きながらくるくると回るような感覚に陥った。

あれ、誰が作ってくれたんだっけ…。

作詞と作曲と編曲、全部同じ人だったっけ…。

ゆるい竜巻のように旋回しながら、俺は定かにならない情報を弄ぶ。

「へえー!いいじゃん」

歌い終えたベッキョンに、チャニョルが大きな目を輝かせているだろう声で、言う。

「うん。いいー。すごいいい」

セフンも心躍っているときの声音だ。

「このあと、ギョンスが、……ぼくのものになって。って言うんだよ」

俺の真似をしているのだろう。表情も含め。

えーまじ!?エロいじゃん!!

かっこいーじゃん、あはははははー。

恥ずかしさに、顔に太陽のものでない、自らの体内の色が付くのが自分で分かる。

ベッキョンのやつ。

俺はこちらを見るなと念じながら、口までブランケットを上げた。

「はあー。だいぶクオリティ高い曲出してきたな。あそこの化粧品会社力入れてんだなあ。まあうち使ってるって時点でそうなんだけど」

マネージャーがひとりごとのようにぶつぶつ呟く。

「アレンジもすげーよかったよ。アコースティックでもいけそうだけど、きちんといろいろ工夫されてた」

「へえー。まじで早く聴きてーな」

「いったん音源もらえんでしょ?」

「ああ。ミキシングが済めばデータでもらえるはずだよ」

「CM見たいな。誰が出んのかな。若い子だよね?」

「お前盛りのついた犬みたいだな。やっぱ一番若いだけあんな」

「なんて言い方するんだよ」

「誰だったっけなー。化粧品の対象年齢が10代後半から20代後半だから若手のはずだけど。あれ、まじで忘れたな」

「駄目じゃんマネージャー」

「わりー」

「この歌だと切ない感じになりそーだな、映像も」

「そーだなー。…ギョンスの歌ってるようすそのまま使えそうだったよ、CMに」

「あ、そう?そんな切なげだった?」

「うん。………誰思い浮かべてたんだか」

俺は眠っている。

眠っているから、これは聞いたり、していない。

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