心中の道連れ 14
ミンソク兄さんの着替える姿をベッドに横になって眺めながら、その裸とギョンスの裸の相違に、俺は思いを馳せていた。
目をつむったギョンスは、肩を出した格好で俺に髪を乾かされていた。
座ったあいつと、立った俺では、その顔はよく見られなかったが、代わりに髪に指を入れる手触りを感じ、剥き出しの首や肩や腕を見下ろしていた。
唇の上下をぴったりと合わせたまま、俺はなにも言わなかった。
言えなかった。
時折自分でもわざとなのか分からないくらい軽く、ギョンスの体に自分の体が触れた。
がっしりした肩の筋肉や、割れた腹筋を兄さんはシャツの下に隠した。
白い肌とあどけない顔立ちがすごく不釣り合いに思える裸はもう、見えない。
こっちを向いた兄さんは「なんだ?」と不思議そうな顔をする。
んーん、と言って首をふるふる振りながら、ギョンスのそれはそんなことがない、と思う。
ギョンスはどこを切り取ってもギョンスという感じがする。
首のラインや、肩甲骨の盛り上がりを目に留めながら、頭にのみ俺は手を置き、動かし続けた。
髪の湿り気が失われていくのを望んでいるのかいないのか、自分でも判然としなかった。
俺は体が熱かった。
全身熱かったが、いろいろな末端が特に熱を持ち、さっき水を飲んだのにどんどん体中の水分が失われていくようだった。
ギョンスの顔は俺の腰周りあたりにあった。
目を開けられたら。
血液が勢いよく流れ、左胸は大きな音を立ててそのことを教える中、髪はもう乾いたと言える状態になっていた。
「はい、おわり」
スイッチをoffにしながら、俺はさりげなく体を離した。
ありがと、とギョンスは言ったはずだ。
そのあともなにか言葉は交わしたと思う。
仕事の予定が入っていたギョンスはゆっくりできるはずもなく、パンを食べながら支度を始め、俺は再び自室へ戻った。
それから。
とうとう俺はギョンスをまともに見られなくなった。
今までぎりぎりのところで、そういうあからさまな態度を取らずに済んできた。
しかし、もう、無理だった。
あのとき部屋に入ってベッドに寝転がり、体の熱をなんとかしようとしたように、いつギョンスを見てもそういうむずがゆさややるせなさが俺を襲う。
ギョンスは、気付いているだろうか?
真正面からは、その顔を捉えなくなったことを。
姑息にこっちを見ていないときだけを狙って、その姿を目に入れていることを。
なにを考え、どう感じているかなど、俺に分かるわけはない。聞かない限り。
聞く?
おやすみー、という兄さんの声に俺もなんてことないように答える。
灯りが消え、自分のベッドランプだけが小さく灯っている。
………ギョンスは、もう寝ただろうか。
あのとき、見た夢の内容を聞いていたら、……教えてくれていたのだろうか。
聞けない。
聞けるわけががない。
俺は目を閉じた。
夢の中だけに、希望を託して。