海の底、森の奥

EXO、東方神起に関する小説など書いています。
お友達を作れたりしたらなあと思っています。
どうぞよろしくお願いします。

心中の道連れ 18

ギョンスの囁きと、化粧品会社のロゴが一緒に、俺の前から去って行った。

俺は口に突っ込んだ歯ブラシのヘッドの横から、歯磨き粉が伝い落ちていくのを感じながら、耳の奥で澄んだ低音が反響するに任せていた。


ぼくのものになって


それは呪文の如く俺に作用して、自分自身が体から抜け出、すべての現実がいっきに遠くなった。

俺のことを見つめる、黒々と太い眉の下の、吸い込まれそうな球体。それは中心がとらえどころのない色と光で丸くかたどられ、俺を金縛りにさせる。

あの夕暮れのその眼差しと、今テレビから流れた言葉が、同じ意味を持って激しく俺を揺さぶった。

思い込み?

顎を伝う液がTシャツに飛び移ろうとしている。

太陽に染まったギョンスが、俺から一瞬も目を離さず、訴えかけてくる。

ぼた、た。

足と足の間にも歯磨き粉が落ちる。

途方に暮れ、しかしなにかが胸から口を通じて飛び出しそうになり、引き返せなくなる恐ろしさにやはり身じろぎできずにいる俺。やって来たジョンイン。暗くなった部屋。蛍光灯のあけすけな光。


ぼくのものになって


きみのものじゃない だって?


口から歯ブラシを抜き、急ぎ足で向かったキッチンのシンクに、口内のものを吐き出す。

何度も何度も口をすすぎながら、体の下から込み上げてくるなにかに圧倒され、俺はシンクに腕をついて体を支えた。顔全体を水浸しにして、息苦しさからくるめまいに耐えた。水の中に腕を掴まれて沈んでいき、どんどん酸素がなくなっていくようだった。腕を掴んでいるのは、もちろん、ギョンスだ。

流しっぱなしにした水道の音と、自分の喉がきゅうと詰まる感覚と、脳裏に浮かぶこちらを振り向く水中のギョンスの顔。俺は経験したことのない恍惚に包まれていた。恐怖と歓喜でますます立っていられない。


なに言ってるんだ


ずっと そうだったんだ


ーーー連れてってくれ


そう、思った。

目に映るギョンスが微笑んだ。

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