海の底、森の奥

EXO、東方神起に関する小説など書いています。
お友達を作れたりしたらなあと思っています。
どうぞよろしくお願いします。

心中の道連れ 20

ギョンスはベッキョンの手を取ったまま、クローゼットのある部屋へと入って行った。

3人分のクローゼットとなっているそのスペースは、ふたりでいるには多少窮屈だった。

ベッキョンはギョンスの考えを推し量ってひとりで赤くなった。そしてそんな自身を恥じた。

いちばん小さな灯りだけ点け、扉を閉めたギョンスがベッキョンを見た。

ベッキョンはぼさぼさの頭にその華奢な指を差し込みかたちを整えようとした。視線を外して。

ギョンスはベッキョンのパジャマから覗く繊細に、しかし鋭く浮いた鎖骨を見た。唇を湿して。

「……なあ」

その低音を耳にすると、ベッキョンは反射的に体温が上がる思いだった。

相手の顔を見れぬまま、「ん?」と口も開かず返事をした。

熱が出そうな気がしているのはベッキョンだけではなかった。

寝間着姿のベッキョンを久しぶりに目の当たりにしたギョンスは、そこからはみ出る首や指や爪先が否応もなく自分を襲ってくるのに目が回りそうだった。サイズが大きいパジャマの、肩が落ちたり裾が引きずられたりしているさまも堪らなかった。

俺は頭がおかしい。

本気でそう思った。

「……今日、テレビ、見たか?」

ベッキョンは思わず、顔を上げた。重い前髪の隙間からギョンスの目を見た。体を硬直させ、乾いた口で答える。

「……うん」

「……あの、CM、もう流れてるらしい」

瞬きのないギョンスの目は、ベッキョンを離さなかった。事実、逃すつもりなんか彼にはなかった。ベッキョンは捕食者に捕らわれているのを自覚しながら、言葉を絞り出した。

「……知ってる。…見たよ……」

がさついた声が、ベッキョンを悲しくさせた。ギョンスにこんな声を聞かせたくなかった。なぜだか泣きたいような気持ちだった。

「俺も見た」

そう言ってギョンスは、ベッキョンをそれまで以上に意識を込めて、見た。

ベッキョンは自分が今まさに泣くのではないかと恐れた。

ギョンスはベッキョンの垂れた眉と、表面張力で水分のぱんぱんに張った目と、ほのかに開いた唇に。

ベッキョンはギョンスの底のない瞳の光と、そこから伝わる意思と、力の抜けた、しかし膨らんだ果実のような閉じたままの唇に。

同時だった。

欲情が体を突き動かし、恋慕が動作に優しさを加味した。

互いの唇を貪りながら体に腕を回し、ふたりはひとつの影となった。

聞き取れるぎりぎりの大きさで、ギョンスがキスの合間、ベッキョンの目を欲に駆られた目で射ながら、「好きだ」と言った。

ベッキョンは垂れた溶けそうな目で見つめ返し、「死ぬ」と思いながら、「俺も」と答えた。

そうしてふたりはようやく、生きながら死んだのだった。





おわり

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