海の底、森の奥

EXO、東方神起に関する小説など書いています。
お友達を作れたりしたらなあと思っています。
どうぞよろしくお願いします。

「心中の道連れ」番外編 『有効な質問』

自室のベッドのヘッドに寄り掛かったギョンスは、相も変わらず台本を読んでいた。

その同じベッドの足元にはあぐらをかいたベッキョンが、ポータブルのゲーム機で遊んでいる。

ぽっかりできた昼間の空き時間に、ふたりはなんとなく一緒にいた。

他の部屋にも何人かメンバーがいるため、これ以上距離を縮めるのは難しかった。

ギョンスの足と、ベッキョンの腰が、触れるか触れないか。

はっきり言ってふたりとも、台本もゲームもどうだってよかった。

満足感と欠乏感が部屋中に満ちていた。

「なあ」

ベッキョンが口を開いた。ゲーム機から顔を上げ、台本に目を落としたままのギョンスを見る。

「ん?」

「俺のさー」

ギョンスがころっと目だけでベッキョンに向かう。

それに対して少し目を伏せたベッキョンは、心持ち口を尖らせ、もごもご繰り返す。

「俺のさー」

「なんだよ」

とうとう顔を上げ、ギョンスは爪先でベッキョンの腰を小突く。

肩をすくめたベッキョンは言いにくそうに、だがなんとか言葉を発した。

「…どこが……好きなの?」

もともと無駄な動きの少ない、じっとしていろと言われたらいつまでもじっとしていられるギョンスが、目をわずかに見開いただけでぴくりともせず自分を見つめるのを、ベッキョンは顔周りの血の巡りが良くなるのを自覚しながら、なんとか逃げずに受け止めた。

「……どこ?」

「…うん」

眉間にかすかなしわを寄せ、こちらを注視するギョンスのようすがなんだかおかしいやら怖いやらで、ベッキョンはこらえきれず視線を逸らし、口元にふにゃふにゃした笑みを浮かべた。かっこわりーな、と思いながら。なんでこんなこと聞いたんだ?と自問自答すらして。

「……陽気なとこ?」

頭を下げたまま、横目で声の主であり、自身の恋人(であるはず)の方を、ベッキョンは見た。

「…プロ意識が高いとこ?」

ギョンスは眉と眉を更に寄せて、いつも通り瞬きもせず淡々とその低い、響きのある声で相手の好むところを挙げていく。

「気配りできるとこ?」

「努力家なとこ?」

「優しいとこ?」

さすがに恥ずかしく、隠せない大きめな自分の耳が色を持っているのも恥ずかしく、ベッキョンは先程以上に首を落として、もういいよ、と言おうとした。まっすぐなギョンスにかかると、自分のおふざけなどそのままど直球で跳ね返ってきてしまう。友人としてならともかく、恋愛関係において、ギョンスを相手にするとどこまでもあたふたして無様になると、ベッキョンは思う。今だってこんな馬鹿な質問をなぜかしてしまって、自分が困惑して照れている。数分前までそんなつもりこれっぽっちもなかったのに。

「…手がきれいなとこ?」

自分の手を見下ろしていたベッキョンは、その声色と言葉に体が勝手にほんのわずかに、跳ねた。

「色が白いとこ?」

「垂れ目なとこ?」

「首が長いとこ?」

ぎし、と音がした。

ベッキョンの目の端に、ギョンスの手の指先が映った。

ベッドの上の体重が一箇所に集まるのを、どちらもが感じた。

長いと言われた首は、その肌すべてを白から赤に変え、おそるおそる上げられた目は力なく常以上に垂れているのを、ギョンスの目はあますところなく捉えた。ぞくぞくと全身をなにかが走る。俺のものだ、と思う。

ゆっくりと顔をベッキョンに近付けながら、唇の端を挑発的にほのかに上げて、ギョンスは続ける。

「……唇を舐める癖があるとこ?」

息が、かかる。今まさに言われたその癖を、ベッキョンは真っ赤になりながら実演していた。無意識に。

「そっちの番」

唇の前で喋られ、ベッキョンは身動きできずにきょときょとと目の前の大きな瞳を見返した。

「俺のどこが好きなの」

もはやギョンスは笑みを抑えることができなかった。

ベッキョンはわけのわからない感情に飲み込まれ、肌が泡立つのが止まらなかった。

「言えよ」

もう、これ以上喋ると隙間などなくなってしまう。

空気を含んだ媚薬のようなその声で、ベッキョンは最後の理性が飛んだ。

開いた唇から舌の色を見たギョンスも、同じだった。

隙間は消えた。

まずこのキスが好きだ、とベッキョンは思い、あと唇が甘いとこ、とギョンスは思った。





おわり

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