海の底、森の奥

EXO、東方神起に関する小説など書いています。
お友達を作れたりしたらなあと思っています。
どうぞよろしくお願いします。

慈雨、降りそそぐ 2

口を最後の言葉のかたちに開いたまま、チャニョルが立ち尽くすのをジョンインは黙って見ていた。

笑って、「またまた〜」と言いそうになるのをかろうじて押し留めて。

それはチャニョルの大きな尖った耳の先が、興奮や緊張で色を持つのを幾度も見てきたジョンインには、今、できないことだった。

チャニョルのそれは、ピンク色の粉をかぶったようだった。

目は変わらずらんらんと異様なまでに輝き、泣きそうなのかと勘ぐるほど光って見えた。

チャニョルは唇を舐め、視線を落として両手を組み合わせもじもじと動かしながら、低い声をよりこもらせて、言った。

「……困らせるつもりなかったっつーか……。言う…つもりもなかったんだけど……。まじでごめん。もしムカついたなら殴ってもいー。勝手に……しちゃって気持ち……わりーだろーし」

男って告白するときこんなに自分より小さく、儚く、滑稽に見えるものなのかと、ジョンインは渦のような困惑の中どこか新鮮に感じ入っていた。

きれいな、誰もが振り返る顔をして、メンバーの中でも一番の身長を持ち、楽器が弾け歌を歌えても、恋う相手にはまったく無力。それが、男なのだ。

そんな世界の真実のかけらを見つめながら、ジョンインはその好意が向けられているのが自分であるという事実を受容したわけではまったくなかった。

いったいなにをどう言ったらいいか皆目見当もつかなかった。

チャニョルが本気で自分を、恋愛対象として好きらしく、気付かれないと思いキスをしたということ。

これがなにかの間違いか作り話でないなんて、あり得るだろうか。

ジョンインの中の許容量は完全にオーバーしていた。

なんで俺は、すぐに目を開けてしまったんだろう?

自分の考えの至らなさをジョンインは責めた。

なかったことにできたのに。

喉の渇きと状況の困難さが重くのしかかり、ジョンインはチャニョルに助けを求めたかった。

チャニョルはそういう存在だった。

いつでも気軽に、楽しく、いっしょに、行動できた。

困ったことや怒ったこと、なんでも気兼ねをあまりすることなく、すらっと言えた。

これがしたいとか、あれは嫌いだとか、自分には存在しない本当の兄貴のように、訴えることができた。

なのに。

ジョンインはその当の本人に今、追い詰められていた。

知らぬ間にジョンイン自身、泣きそうな、真に困った表情を浮かべ、チャニョルを見ていた。眉は垂れ、重い二重は更に厚ぼったく瞳を隠した。

そろそろとジョンインに目をやったチャニョルはそんな弟分を見て、胸をぐさりとひと突きされたようになり、思わず、また、

「ごめん、ごめん」

と謝罪が口をついていた。

ためらいながらも、数歩ジョンインに近寄った。

「兄さん」

ジョンインはなにも考えていなかった。

ただ望むものを口にした。

「水、飲みたい」

チャニョルは数度、目を瞬いた。





つづく

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