海の底、森の奥

EXO、東方神起に関する小説など書いています。
お友達を作れたりしたらなあと思っています。
どうぞよろしくお願いします。

慈雨、降りそそぐ 4

翌朝目を覚ますと、部屋の中のベッドはすべて空だった。

ジョンインは昨夜入浴後すぐ床に着いたことは成功だったと、体を起こして嘆息した。

眠れるだろうかと目を閉じて訝ったが、見事に熟睡した。夢も見なかった。

心身ともに疲弊していたんだなとジョンインは妙にすっきりした気分で納得した。

部屋を出、リビングへ行くとジョンデがいた。

テーブルにつき、朝食とミンソクが淹れたらしいコーヒーを摂りながら、新聞を読んでいる。

どこかのパパのようなそのさまに、ジョンインはいつもよりずっと気持ちの落ち着きを感じ、思わず口元に軽い笑みを浮かべ、おはよー、と言いながら斜向かいの席に腰掛けた。

「はよ。パンあるぞ」

そう答えたジョンデは顔を上げてジョンインを見た。

ぼさぼさの頭を右に左に振って、なだらかな曲線を描く首から肩をならしている弟分は、寝起きだとまだ少年のような佇まいが多分にあった。弟のいないジョンデは年下メンバーを実の弟たちの如く感じていたが、まさにこういうときにその感覚は強まった。なぜか今朝のジョンインは少し気弱な雰囲気をまとっていた。うん、と答えるその声のトーンも、幼い子供のそれだった。

「今日、仕事急がなくていいのか?」

新聞を折り畳んで隣の椅子に置くと、ジョンデは残ったクロワッサンをちぎって口に運びながら、優しい声音でジョンインに話しかけた。

ジョンインの鼻に、コーヒーとバターと酵母の混ざった朝の香りがかすかに届く。

膝を折って椅子の上にかかとを乗せた格好のジョンインは、「ご飯食べたら、行く」と、まるで親に答えているみたいだなと自分で思うくらい、不機嫌なような、ぶっきらぼうな、しかし気を許しているからこその話し方で口をきいた。学校行きたくないな、とでも言い出しそうに。

ジョンデはふ、と笑って、そっか、と呟いた。

食卓に乗せられたクロワッサンと菓子パン、トマトの櫛切りと殻のついたゆで卵。

肉が食べたいな、とジョンインはぼんやり思うが、思うだけでなにも言わず、立って冷蔵庫に向かった。

ぼこん、と扉を開けるのと同時に、

「ベーコンとウインナーあるぞ」

と、ジョンデの声がジョンインの背中に掛けられた。

振り向くジョンインの、ほうけたような、それでいて訴えるような表情に、ジョンデは呆れるとともに破顔する。

「焼くよ」

よいしょ、と言って立ち上がり、ジョンデはジョンインが牛乳のパックを持つ横から手を伸ばしかけ、どっちにする?と尋ねる。

どっちも、とジョンインが言うと、ジョンデは彼ならではの笑顔と高音で笑い、お前なー、と相手の美しい肩を肘でこつんと突いて、ベーコンとウィンナーを手に取った。

ジョンインはカップを持ってテーブルに戻り、ついだ牛乳の冷たさと甘みを口に感じながら、ようやく日常が戻ってきたように思った。

じゅうう、と、油が熱くなる音が快かった。





つづく

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