海の底、森の奥

EXO、東方神起に関する小説など書いています。
お友達を作れたりしたらなあと思っています。
どうぞよろしくお願いします。

食べよ、歌えよ、恋せよ 3

撮影とインタビューを終え、移動車の中、前後に並んで座ったふたりは、言葉を交わさなかったり、交わしたりしていた。いつものように。

夕方に差し掛かり、窓の外はその日の天気の良さを表し、美しい暖色に染まり始めていた。

その色を眺めながら、チャンミンは思い出した。はめたイヤホンを片耳だけ外す。

「そうそう、それでなんですよ」

こちらも音楽を聴くため両耳に栓をしているのに近いユノ相手に、若干大きな声を出す。

「んー?」

サングラスを掛けたユノは、心持ち振り向きながらチャンミンと同様片耳だけ解放する。

「今朝、ジャムを買ったんです」

「今朝?」

「今朝」

「ネットでってことか?」

「ううん、買いに出た」

「よくそんな時間あったな」

「だって今日予定早かったじゃん、もともとは」

「ああ、そういやそうだったな。俺電話来たとき一瞬起きて、また寝たんだったわ」

「そんなこったろうと思った」

はは、と笑いユノは言う。

「昨日飲み会だったんだよー」

「あ、そうなの」

「飲み会って言うか……合コン?」

「マジで?」

「マジで」

「地元の友達関係?」

「いや、後輩のひとりが集めた」

「三三?」

「四四」

「どうだったんです」

「全員と連絡先は交換したよ」

「全員と?」

「うん、とりあえず」

「なんだかなあ、それ。八方美人発揮されただけじゃないの」

「言うなあ、お前は」

ユノは言いながらまた笑う。

「いい子いなかった?特別」

「うーん、なあ」

「兄さんを気に入った子は?」

「俺はモテモテだよ」

「そういうのいいから」

「ほんとだって」

「いや、ほんとに」

「そんなにぐいぐい来た子はいなかったなあ」

「ぐいぐい来てほしいわけでもないでしょ」

「まーな」

「それとなく来る子もいなかった?」

「…うん、そーだな」

車がかすかに揺れ、ふたりの体も同時に傾いだ。

「で?どこに買いに行ったんだよ」

「ジャム?」

「うん」

「ほら、僕のマンションの近くに新しくショッピング施設できたじゃないですか。あそこにでっかい輸入食料品店が入ってるんだよ」

「…ああー。そうだな、ずっと工事してたとこな」

「オープンしたんだよ。初めて行った」

「どうだったー?」

「なかなかよかったですよ。いろいろ考えられてました」

「俺も今度行ってみよ。デートに使うかもだし」

「じゃあ合コン今度は成功させないとね」

「昨日のがこれから成功に向かうかもしんねーだろ」

「いや、駄目でしょうね」

「わっかんねーだろー?」

「ともかく、僕は今日はジャムしか買いませんでしたけど。また行きたいですよ」

「また、苺のにしたのか?」

「ええ、…フランスの」

「いいじゃん〜」

チャンミンは大瓶をふたつ、買った。ピンクがかった赤はチャンミンに自らの美味しさを主張し、ユノへのお返しにと両手ひとつずつ持ち、そのままレジに向かった。そのうちひとつは鞄の中に入っている。

メイクルームでのユノの人差し指の先や、チャンミンの言葉に心底嬉しそうに微笑む顔が、チャンミンの脳裏に浮かんだ。そしてユノが昨夜四人並んだ若く美しいだろう娘といまいち上手くは行かなかったという事実も。

「………美味しかったら、今度はブルーベリーにしてみます」

「おー」

しばらくしてユノはイヤホンを耳に戻す。

それを見つめながら、チャンミンもしゃかしゃかと音の漏れる玉を耳の穴へと押し込んだ。

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