海の底、森の奥

EXO、東方神起に関する小説など書いています。
お友達を作れたりしたらなあと思っています。
どうぞよろしくお願いします。

食べよ、歌えよ、恋せよ 5

昼下がりからの仕事の日。

チャンミンはベッドに横たわっていた。

隣では濃いブラウンの流れる髪が、カーテンの隙間から零れる光を受けて光っていた。手入れの行き届いたその髪に、指先で軽く、チャンミンは触れた。ぷるん、と押し返す感触に満足を覚えながら、チャンミンはうつ伏せていた体を仰向け、ふー、と嘆息した。

ベッドサイドの携帯に手を伸ばす。

まだ昼前だ。

久しぶりに朝をゆっくり家で過ごせる。

チャンミンは下着のパンツだけを履いていた。隣に寝ている方は何も身に付けていない。だいぶ暖かくなってきたこの季節、部屋の中は、暖房を付けずとも布団の中にくるまれていれば寒さを感じることはなかった。向こうを向いた肩の先が陽光を反射するのをチャンミンは見ながら、もう一回しようか、起きて朝ご飯を作ろうか思案した。この肩を掴んでこちらに向かせ、その唇に口を付ければ、相手はすぐに舌で自分を迎えるだろう。

あ。ジャムがある。

動物的な舌の甘さより、苺に砂糖と熱を加えた、喉を優しく焦がして落ちていく、あの、甘さ。

買って以来、早朝からの仕事が続き、まだ封を開けていなかった。

思い付いたら、淡い性欲はふわふわと霧のように宙に消えていった。

起き上がり、チャンミンはその肩を色気のかけらもないようすで掴み、揺らす。

「ほら、もう起きた方がいいよ」

うーん、と声が上がる。

早くパンを焼きたい、チャンミンはそのまま相手を放って、ベッドを出た。



「チャンミン、そこどーした?」

ユノが斜め後ろから、声を掛ける。

打ち合わせのためにテーブルをスタッフと囲むふたりは、並んで座っていた。

スタッフだけが事実確認の必要から話し合いを始めたさなか、椅子に背をもたせかけたユノは、チャンミンの首に目を留めた。

チャンミンは振り向き、ユノがチャンミンを見つめながら、自分の首の後ろに手を回し、指の先でつんつん、と触る仕草を見る。自分の首の後ろに手をやると、小さなミミズ腫れのようなものがあるのを指が見付けた。

「引っ掻いたか?」

ユノがにや、といやらしい笑みを浮かべて、言う。

「自分でじゃなさそうだなあ」

チャンミンは眉で八を描き、唇の片方を上げて答える。

「気持ち悪い想像しないでください」

「してないよ、別に」

「してる顔ですよ」

「だいたい気持ち悪くないだろ」

「兄さんがしてると気持ち悪い」

「彼女できたのかよ」

「できてませんよ」

「…ああー。あの、モデルの子?」

「…そーです」

ユノは手元の資料に目を落として、口元の微笑はそのまま、言う。

「……まだ続いてたんだー。付き合ってんじゃないのー」

「付き合ってませんて」

「そーなの?」

「自分だって、そういう子いるでしょ」

「最近めっきりご無沙汰だよ」

「…マジで?…まだ、若いのに、枯れたの?兄さん」

声を落とし、スタッフを気にしながら、チャンミンはわずかに目をむいてユノに問う。

「…枯れちゃったのかなー」

はあー、と大げさなため息を漏らし、ユノは首を振った。

「…なに馬鹿げた芝居してんの。やばくないですか、ほんとになんもないんですか」

んー、と上目遣いをし、記憶を辿るような風を見せ、ユノは答える。

「…ないな」

「…じゃあ、もう、映像ばっか…そして自分で…」

「まあなー」

「………せつねー」

チャンミンは呆れたようにユノを眺める。

「そういうときもあるんじゃん?」

「若さを楽しみなよ」

「もう若いって感じしねーよ、正直」

ぺらりぺらりと紙をめくりながら、まったく普通に零したその言葉が、ユノの本心であるとチャンミンには分かった。でも、そんなこと言ってほしくない、とチャンミンは思いながら、口にはしなかった。

「まったく、おじさんはしょーがないな」

チャンミンはそう言った。

ユノは笑っている。

スタッフがふたりに話し掛けた。

揃って、東方神起は顔を上げた。

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